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君しかいない

君しかいない

俺を見て? すこしでもいいから 俺ばっかり君を見てるんだよ 知ってる? 更新:週末
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俺はな、本当に幸せになってほしいと

そう思っていたんだ。


巧也のためにも、綾のためにも。


君しかいない

eleven


巧也は、俺が公園から離れると言った。



「俺の好きな人は、君しかいない」

と。



俺はわかっていた。

まだあいつが綾のことが好きなこと。


そして、あいつの過去も、全て…



別に調べたわけじゃない。


俺が中学のとき、周りにおもしろい話には目がない奴がいて、俺はそいつから、いろんな人の秘密なんかをよく聞かされていた。

その話のネタに


たまたまあいつが入っていたんだ。


姫野巧也の過去の話が。


奴の名前は安藤 弥幸(あんどうみゆき)。
名前は女みたいだが、男だ。


俺がまだ今のような優等生ではなく、世に知られる不良という人種だったころ、つるんでいた仲間の一人。


結構話しやすい奴だったのもあって、一番仲がよかった。


でも、そいつが言う「秘密」に関してはあまり興味がなかったので、いつも聞くだけ聞いていた。

しかし、姫野巧也の話に関しては


何故か俺は、聞いているうちに興味を持った。


特にたいした秘密でもない。


小学生の頃に付き合っていた彼女に、自分の誕生日の日であるクリスマスにフラれ、その日から女と話せなくなったという話。


でも、なぜか興味を持った。

まぁまさか高校で姫野巧也と友達どころか親友までにもなるなんて、当時は思いもしなかったけれど。

それに、あいつが綾を好きになるなんて


それこそ考えもしなかった。



安藤は言った。


「まぁ失恋なんて、しないほうが不思議だけどな」


俺は、失恋なんてしたことがない。
いつもフる側の立場にいるから。

でも馬鹿だよな。


今までいろんな人と付き合った。


でも誰一人として

本気じゃなかった。


綾だってそう。

本気なんかじゃなかった。


でも、ただ付き合うだけじゃつまらないと思って



俺は最悪なことをした。



何人もの人と、関係を持った。
二股どころじゃない。

あのころは限度というものがわからなかったから。いや、考えようともしなかったから、とりあえず遊んだ。


当然、綾は俺に怒った。


「なんで?」

「なんで他の女の子とあんなことするの?」

「だったら付き合わなければよかったのに!」



でも、彼女は別れたいとは言ってこなかった。

きっといつか、俺が彼女だけの元へ帰ると思っていたのだろう。

それだけ彼女は、綾は、俺のことを愛してくれていた。


でも、俺はわかっていなかった。



だから


俺はフッタ。



「欝陶しいんだよ。お前は。最初っからお前のことなんて好きでもなんでもねぇんだよ。」


最初に優しくして

優しくしまくったあとに、他の女と遊んで


遊びまくったあとにフる。



最悪な奴。

俺は、綾を傷つけた。


その傷は、ずっと消えることはなかった。



彼女は男嫌いになり、そして、女とも口をきかなくなった。


人間嫌い


姫野と同じ。

だから俺は姫野巧也に興味を持ったんだ。



巧也は思っていた以上にいい奴だった。

純粋で、素直だった。


だから俺も、あいつの前ではいい奴でいられた



……いい奴でいることが、俺が出来るせめてもの償いだった。

綾は俺と付き合っていたのもあって、同じ高校に進んでいたから。


何かあったときに助けてやりたかった。


でも


「帰って」


綾が大量の風邪薬を飲んで病院に運ばれ、俺が黙って病室に入ったとき、彼女が言った。

俺は構わず、ずっと病室で看病をしたけれど。

彼女は俺とは話したくない様子だった。



「誰のせいで!こんなことになったと思ってんの?!親も死んで、何も頼るもんがなかった私にあなたが現れて、優しくしてくれて、どんなに救われたと思う?それをあんたは……っ………………」


やっと話し出したかと思えば

内容はとても残酷で


俺がしたことなのにな。



だから、幸せになってほしかった

だから、巧也と、出来れば付き合うまではいかなくても、友達になってほしかった。

あいつなら、綾のことをちゃんと優しく思ってくれるはずだから。



だから


俺は綾を巧也に会わせた。



「なるほどね…」

綾にはとりあえず公園に来るようにとだけ言った。



「旬はこうしてほしかったわけね………」

「え?何て?」


巧也はとても驚いていた。

そりゃそうだろう。

好きな人が、突然目の前に現れたんだから。



俺は二人が会えたことを確認すると、その場から離れ、家に帰っていった。


………そのあと二人がどうなったのか、どうせ知ることになるのだからもうどうでもよかった。


俺はただ、二人が幸せになってくれればいい。



本当に、あのときはそう思っていた。






―――新たに生まれてきた感情を、無理矢理押し殺しながら。
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そこには手紙が入ってあった。

ラッラブレター?!

と、思ったのもつかの間………


君しかいない

ten


―――今日学校行けなくてごめんな。
ちょっと話したいことあるから8時くらいに近所の公園に来て待ってて?
絶対来いよ。



………どこから見ても、差出人は俺に好意を持つような相手ではなかった。


「なんやーラブレターかと思ってさりげなくチラ見してたのに、志摩からかよ~つまらんなぁ~」

「…まぁ人生そんなに上手く行かないもんだって。」


俺は手紙に目を向けながら、作った笑顔でそういうと、いつもうるさい岩崎が急に静かになった。


「えっ俺なんか悪いこと言った?」

「いや、なんでもない」


そう言ってスタスタと歩き出してしまったので、俺は慌てて岩崎の元へと駆け寄った。



************





―――8時。


俺は志摩に言われた通り、近所の公園に居た。

回りは真っ暗で、そしてとてつもなく


「寒い…………」


早く来いよ…心の底からそう思った。


すると、遠くの方から足音が聞こえてきた。

それと同時くらいに降り出す雪。

最近雪降りすぎ。
ただでさえ寒いのに、最悪…


「ごめん遅くなって!」


目の前に現れたのは俺がずっと会いたかった人。
………いや、変な意味じゃないぞ?決して俺はボーイズラブつまりホモじゃねぇから!


「あっ志摩。先生がから風邪だって聞いたけど大丈夫か??」


実は心配だった。
志摩はめったに風邪なんかひかないから。


「あぁ、それ嘘だから。今日はサボり。」

「え?!」

「たまにはいいだろ?まぁとりあえずあっちのベンチに座ろ?」

「あっう…ん………」


俺たちは近くにあるベンチに座った。
…しばらく沈黙が続いた。

なんか、何話したらいいのかわかんなくて、志摩と一緒にただ座っていた。


志摩は俺のその様子に気付いたのか、少したってから話しだした。


「あっ俺が話あるって言ったんだから、俺から話さないと始まらないか」

なんて笑いながら言って、志摩は話をしだした。



「戸田のこと…なんだけど、俺のせいであきらめたりしようとしてる?」

「え……」


その話が出て来るとは思っていなかったので、何て言えばいいのかわからなかった。


「ごめんな。」


そう言って俺の頭をポンポンッとたたく。


「巧也は戸田のこと、好きだよな?」

「………」


あまりにも志摩が真剣な顔をして聞くので、俺は何も言えなかった。


「………好きな人って、なかなか出来るもんじゃないよ。巧也さ、中学の頃からずっと女苦手だっただろ?でも戸田のこと、好きになったんなんだろ?」

「……………」

「俺のことは気にすんな。戸田とはただの同級生だっただけ。少し付き合ってただけだから。キスも何もしなかったし、手だってつながなかった。だから、巧也が気にすることなんかない。戸田と巧也が付き合うようになっても、俺はお前のこと親友だって思ってるから。」

「……………」



俺はずっと俯いて、話を聞いていた。


………こんなはずじゃなかった。


「じゃあなんで最初に言わねぇんだよ」


こんなこと


「なんで!…っ………」


志摩に言いたくなんかないのに。

そう思うと涙が出てきて何も言えなくなった。


そんな俺を、志摩はいつもの優しい顔で

「ごめんな」

と、言っていた。



なんで好きになったのが

親友と同じなのかな。

なんでかな。

ただ

前に

進みたかっただけだった

ただ

また、恋がしたかった



「俺っ………綾ちゃんが好き………」


志摩に涙を流しながらそう伝えると、笑いながらそういうことは本人に言うべきことだろ。と言われた。


でも、俺…


「じゃあ今日は来てくれてありがとう。また学校でな!」

志摩は帰って言った。


俺、


気持ちを伝えることはいいことだと思うけど


綾ちゃんには伝える気はない。

だから


せめて


「俺、綾ちゃんが好き。」


誰もいない、この場所で。

この気持ちを伝える。


「綾ちゃんしか、俺の好きな人はいないよー………」


女が苦手だったけど

もう大丈夫かな?


理砂のおかげだよ。

もう理砂に会うことはないけど、いつかお礼したいな。


好きになるって、すごいことなんだな。


「俺の好きな人は




君しかいない」



少し大きい声でそう言った。


「………なるほどね」


後ろから、突然声がした。

すみません!!

前回の〔君しかいない〕は、nineではなく、eightの間違いです!!

この話が9話目(nine)ですので!

ということなので、この下に書かれているのは8話の続きになります。

ややこしくなってしまってすみません!!!


--------------------------------------------------------------------



……俺、年上としか付き合ったことないんだけどな。

はっきり断るつもりだった。



「…ダメ…かな……?」


君はそう言って俯いた。


君しかいない

nine


今日も暇だ。

学校なんて


「姫ぇ~~~」

「プッププ!プリンセス of  欠てぇ~ん!!」

「あれ?お前、姫の呼び方思い出したんやな~」

「あったりまえだろ!俺の親友だもん。」

「何ゆぅてんねん!!俺のほうが姫の親友やし!!!!!な~姫ちゃん♪」


……まぁ結構楽しいもんか。


「あのなぁ…お前らさ、親友と思うんならせめてその呼び名やめろよな…いちいち長ったらしぃんだよ。特に岩崎。俺は女じゃないから。『ちゃん』をつけるな。」

「え~僕ちゃん、この呼び方気に入ってるのにぃ~ひどぉいよ~そんなこと言わないでよ~」


そう言って俺に抱きついてくる東野。

それとは対照的に落ち込んでいる(ふりをする)岩崎。


俺は抱きつくな。と冷たく言いつつも、やっぱり笑いながら話している。

こいつ等といると、つまんねぇ学校も、結構楽しくなる。


…あれから俺は、戸田綾のことを忘れるのに必死だった。
忘れなくてもいいとも思った。
でも、やっぱり忘れた方がいいだろ?




フラレルノナラ、オモワナケレバイイ。






俺はいつもそう思うことで女を避けて来た。

だから、


俺は女が苦手になった。

お前、たったそれだけのことで苦手になったのか?

うん。たったそれだけ。


だから知られたくなかった。

それだけのことで…って思われたらさ、なんか男として恥ずいじゃん。

それに、




もう中学時代のようにからかわれたくなかった。



だから言いたくなかった。


でも、女が苦手になってしまった以上、それを治すことなんて出来なかった。



結局俺は、自分が一番大事な臆病者。
だからいつも逃げる。

彼女が待っていてくれている。

そう思っていても、何も行動を起そうとしない、いや、起すことも出来ない本当に臆病者。






****************



「姫ちゃん!」


俺を、愛しい君が優しい笑みを浮かべて言った。


「……里砂ぁ…いいかげんその呼び名やめようよ。女みたいじゃん…」

「だって姫ちゃんはあたしのいもーとだし♪」

「も~…じゃぁいいよ。それで。」


俺は里砂にわかるように、あからさまに不機嫌な表情をする。
すると、それに気づいた里砂は先ほど浮かべたのと同じように優しい笑みを浮かべて。

俺だけに笑ってくれて。

俺の髪をクシャクシャッとして、俺が最も言って欲しかった言葉を言ってくれた。



「うそだって。姫ちゃんは、あたしの彼氏だよ?」






俺たちは、まだ小学生だった。

周りにはまだカップルなんていなかったから、さんざんからかわれた。


だから幸せで。




幸せすぎた。




だから、俺はバカなことをした。

俺はバカだった。

今だって欠点ばっかりとって、どうしようもないバカだけど。

あの頃は小学生だったのもあって、物事を考えることがまだしっかりしていなかった。

結構他の子に比べたら、背が高くて、大人っぽくて、

それに彼女もいたりして、ませている子供と言われていたけど、


ただ単に、カッコつけの馬鹿なガキだった。



君は、里砂は、俺に気持ちを伝えてくれた。


「大好きなの」と。

「いつもイジワルばっかりしてたけど、全部かまってほしかっただけなの」と。


今まで付き合ってきた人と里砂は、全く違うタイプの人だった。



「…ダメ…かな……?」


君はそう言って俯いた。


なぜか、断れない自分がいた。

真っ赤に顔を染めた彼女の姿が可愛かったからかもしれない。

でもあの頃の俺は、自分の中で、何かが芽生え始めたのを抑えながら


「ダメじゃないよ。」


と言って、彼女にキスをした。



いつも彼女は優しかった。
いつも傍にいてくれた。
いつも悩みを聞いてくれた。
いつも励ましてくれた。


今思えば、俺は里砂の言う通り

里砂の『彼氏』ではなく『妹』だった。


だから俺に頼れなかったんだよな。

ごめんな。

俺、里砂に頼りっぱなしだったもんな。


*******************


「姫~一緒に帰ろ!」

「あっうん。あれ?東野は?」

「昼休みんときに『疲れたから帰る』っつって帰ったやんか。」

「あっ…そうだったな。」

「聞いとけや。」

「あはは。ごめんごめん。」


あっという間に今日の授業が終わった。

久しぶりに昔のこと思い出していたからかな。


そんなことを思いながら、岩崎と会話を交わしながら下駄箱に向かう。


「…あれ?何これ。」




自分の名前が書いてある下駄箱を開けると、俺はそう言った。





   to be continued...






「明けましておめでとうございます!今年も主役の俺、岩崎剛をよろしくお願い致します!」

「…突っ込むのもめんどうになってきたんだけど。」

「え~姫ちゃん相変わらず冷たいわぁ…ちょっとくらい突っ込んでくれてもいいやん!なぁ~姫ぇちゃぁぁぁん???」

「……………。」



え~まぁ変な奴は置いときまして…改めまして、かなーーーーり遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。

こんな奴ばっかですけど、今年もよろしくお願いします。

で、8話の続きはですね…あれから…まぁ…………とりあえず読んで見て下さい。


君しかいない

eight


「なんでっ巧也まで泣くんだよ…」

「しょっ小説のストーリー上泣くしかなかったんだよ!」

「なんじゃそりゃ………」


そのあと、俺達は小さい子供のように、馬鹿みたいに声をあげて泣いた。

電車に乗ってくる人達は、そんな俺達に冷たい視線を送りながら別の車両へと移って行く。

それでも俺達は構わず泣いた。


しまいには泣きつかれて、涙が出なくなるほどまでに。



「俺ら、馬鹿だよな。」


志摩が笑いながら言った。


「そうだな」


俺も笑いながら言った。


それからあとは何事もなかったかのように、志摩は立ち上がって、俺の体を起こしてくれた。

そして、二人とも無言のまま家に帰った。




「ただいま…」

家に帰るとすでに0時を回っていた。

怒られるかと思い、ほんの少しだけ気合いを入れ直して鍵を開けたのにも関わらず、家族は全員寝てしまっていた。

おまけに母親と父親は、仲良くいびきをかいて寝ている。

……別に怒られないほうが楽でいいけどさ。


心配しならすぎだろ。



そう思いながら自分の部屋に行き、寝た。


―――夢を見た。


俺の隣に誰か居て、俺はずっと笑ってて。


隣の奴も笑ってて。


すごく楽しくて。



当然、隣の奴はあきらめた(けど結局まだあきらめきれるはずもない)戸田綾ちゃんだと期待をしながら顔をのぞきこむと………


「ん?なんや?」


…………岩崎だった。




変な夢。

ずっと声は戸田さんだったのに。


そう思いながら目をこすり、無理矢理からだを起こす。


「あっ巧也ー!昨日何してたのー???」


朝から俺に向かって高い声で叫ぶのは、今年から小学1年生になる妹の夢子。


「もー心配したんだよー?」

「どこ行ってたの???」


次々と話をしだす女たち。
俺はとりあえずごめんなと一人一人に声をかけながら、朝食の準備をする。


………実は、俺の家族は、俺を含めて7人家族。

なんと、5人兄妹。

ちなみに一番上の俺を除いて全員女。


「巧也早くー」

「巧也ー!」

「はいはい…」


パン一つ焼くにしても、全員分焼かないといけないので、朝はかなりしんどい。

それに「お兄ちゃん」ならまださも、全員俺のことを「巧也」と呼びすてしやがる始末。

まぁ………………もう慣れたけどな。


そんなことを思いながら妹達のパンをテーブルの上に用意した皿に置く。


「いっただっきまーす!」


でもこうやっておいしそうに食べる妹達を見ていると、結構嬉しくなったりする。

あ~焼いてよかった~。


みたいなさ。



そうしているうちに妹達は幼稚園、学校、中学校やらに行ってしまった。


「いつもありがとな。」


そう言っていつのまにか起きて用意を済ませた父親は、俺が自分のために焼いたパンをかじって会社に出勤していった。


「最悪…」


そう呟いたが、父親に聞こえているわけはなくて。


仕方なく俺は朝食をとらずにそのまま学校に行った。



************



「あっ巧也おはよう」

「姫ちゃんおはよー!生きてたかー?」

「おー…………mgtnd0ta…of 欠点!おはよう!」
「おはよ。ってか東野なんだよ。その呼び方。」

「いやぁ…久しぶりにお前と話したもんだから何て呼んでたか忘れた。」

「…………あっそうですか。」

「東野ー!お前そりゃないやろー!まぁ俺も忘れてしもたけど!」


…なーんて馬鹿な話を4人でしていると、いつものようにチャイムが鳴って、あっという間に朝のHR(ホームルーム)が始まった。


………今日もいつもと同じ時間が流れていく。


いつものように俺は朝食を抜いて、こうやって席に着いてきちんと先生様の話を聞いているし。

いつものように志摩や岩崎や東野達と馬鹿やって。






でも、今日は違った。


「好きになんの、やめるわ!」


志摩に安心させるために、俺は笑顔で言った。

でも、やっぱり急すぎたかな?

でもな

『綾菜ちゃんと話せなくなるより』、

『志摩と話せなくなる』ほうが


俺にとってはつらいことなんだ。


君しかいない

seven


あと4日も経てば、『あの日』がやってくる。


「姫~~!!失恋は癒せたかぁ~~~~?????」

「プリンセス of  欠点…まだ心の傷は消えないのでありますか?」


俺の頭の上から次々に話す男たち。

「…その話題、やめてくれません?つ~かね、俺は!失恋したわけじゃない。恋愛感情ってもんがなくなっただけなんで」

そう言って俺は席から立ち上がる。

「どこ行くんや?」

「散歩!!!!」

「もうすぐ授業始まってしまうで?!姫!」


岩崎の言葉を最後まで聞かずに俺は教室の扉まで足早に向かった。

「あっ巧也…?」

「……おはよ!」

「えっどこ行くの??」

俺は志摩の問いには答えずに、ニコッと笑顔を作りそのまま何も言わずに教室を出た。


「志摩ぁ!おはようさん♪」

「あっおはよう…」

「何か最近姫とあんま話してへんやん。どないしたん?」

「……………」

「志摩~?お~い!生きてるかぁ~~~~?」




***************



「なぁ~~~にやってんだろなぁ~~~?」

「あ~それ、私も思うよ」

「だよなだよな~」


俺は一人で、学校の屋上にいる。
一人で、ここで寝っころがって空でも見たい気分になって。
だから一人で、ここへ来た。

……へ?


「……え?」

「どうしたの?」

「戸田…さん……?」


嘘だろ?


「姫野くんと話すのすごく久しぶりだね~。席離れちゃったら話す機会ってあんまりないよね?」

「そうだね…」


以前の俺なら、素直に嬉しかったのだろう。


「そういえばこのまえあった期末テストどうだった?」


彼女の笑顔


「あ~いつもどおりって感じだったよ」


彼女の声


「私も。ここの高校って進学校なだけあってテスト難しいよね?」


全て、愛しくて。でも彼女は決して、


「そうなんだよな~」


俺には


「ね~!あははっ」


本当の笑顔は見せてはくれない。


「………じゃあ、俺行くわ!じゃあ!」

「え?どこに行くの?」

「…教室!」


ウソツキ。

教室なんて、行く気なんてねぇのにな。

だって仕方ないじゃん。
今の俺じゃ、彼女と一緒に居ることは


つらいことでしかないんだから。


俺は学校から出て、行く先も考えずに電車に乗った。

……ったく!似すぎなんだよ!


綾菜ちゃ…戸田さんと、志摩。

喋り方や、ちょっとした仕草が、一緒なんだよ。


もう



「俺があの二人ん中に割り込むことなんて……本当の本当に…出来るわけねぇじゃんか…」




誰にも聞こえないように小さな声で言った。
『聞かれたくないんなら声に出すなよ』って、今、俺の隣にアイツ等がいたら言ったかなぁ?
でも、声に出したかったんだ。

少しだけ。

ほんの少しだけ、誰かに聞いてもらいたくて。


……矛盾してるよな。


思わず苦笑してしまう。

俺、何してんだ?

これじゃまるで、悲劇のヒロインじゃねぇか。

まぁたまにはいいかな。


そもそも本当の俺は恋なんて出来る男じゃなかったんだから。



女が嫌いだったのだから。

こんなことになるんなら、恋に落ちなければよかったな。

『あの日』のまま、時間が止まっていれば

恋なんてしなかった。


何で前に進もうとした?



そのまま立ち止まっておけばこんなことにはならなかった。

お前ならこんなバカな俺を見て何て言う?
あの頃と同じようにまた俺のことバカにしてた?
それとも、『あの日』のように俺を…


なぁ?何か言ってよ。




「……里砂。」





気がつくと外は真っ暗になっていた。

黒い闇に、かすかな白い光。


こんな都会の街でも雪って降るんだな。


そう思いながら近くにあった座席に腰をかける。

次々と進んで行く電車。
次々と、いくつもの駅を通り過ぎて行って…
それと共に時間も過ぎていく。

何時間経ったかなんてわからない。

別に知ろうとも思わなかった。


ただただボーっと、座席に座って窓の外を見つめていた。



「巧也!!!!」

「え?」

どこかの駅に着いた瞬間、ドアが閉まると同時に聞こえた。
でも、ドアの入口付近を見渡してもその声の主らしき人はいなかった。

やっぱり気のせいか。

そう思いまた元に居た座席に座った。


でも、それは確かに、アイツの声だった。


何個か駅を通り過ぎたあと、俺を迎えに来てくれた。


「巧也!!!お前っ何してんだよ!」

「志摩…?何で?」

「今何時だと思ってんだよ!心配かけんな!」


そう言って志摩は驚いて立っている俺を抱きしめた。


「ちょっ???!!って志摩~!キモいから!あっははははは!ちょいやめっ!」

「お仕置きだ~!お前って意外にくすぐられんの苦手だろ?ほれほれっ!!」

「あっははっはははは!マジ無理!もう耐えられねぇって!!あはははっ」


それからしばらくの間、志摩は俺をくすぐっていた(わきの下らへんを中心に)。
でも、やめてくれたかと思えば、志摩の表情がだんだん変わっていって…


「もう…俺に背中向けんなよ…」

「え?急にどうし…」


彼は


「勝手に一人で行動すんなよ!そんなに頼りねぇの?お前が綾菜のことやめるって言ったときだって、俺が『なんで?』つっても何も答えねぇで!俺、お前が女苦手なの隠してんのも知ってんだぞ?でも綾菜のこと、それでも好きになって、必死に女嫌い治そうとしてたから、あえて言わなかったけど!なぁ!お前、俺のこと嫌いなわけ?なんで……なんであからさまに避けんだよ!」



泣きながら、そう言って俺の足元に崩れるようにしゃがみこんだ。

俺はそんな彼を目の前にしても、何て言えばいいのか思いつかなくて。



ごめんの一言も言えなくて。

嫌いなんかじゃないとも言えなくて。


だから俺もしゃがみこんで一緒に泣いた。




to be contened…

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プロフィール
HN:
雨音美夜
性別:
女性
自己紹介:
こんにちは。雨音美夜です。
「君しかいない」
は、馬鹿な男、姫野巧也による馬鹿な恋の話です(笑)
おもしろい話に出来るかはまだわかりませんが、気に入っていただけると嬉しいです。
(君しかいないは完結しました。)

更新は基本は週末ですが、結構不定期なので暇つぶしのつもりで気軽に読んでいってくださいね♪



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