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君しかいない

君しかいない

俺を見て? すこしでもいいから 俺ばっかり君を見てるんだよ 知ってる? 更新:週末
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志摩が学校に来た。

嬉しかった。

でも、それと同時に嫉妬もしてしまった。


「あっ綾!!!大丈夫だった?」


君しかいない

six


志摩と綾ちゃんが一緒に入ってきた。

「おっ志摩久しぶりやな!」

「何してたんだよ?」

「あ~ごめんな…もう大丈夫だから!!」

岩崎と東野は志摩に声をかけていたけれど俺は話しかけられない。

なんとなく、話しかけづらかった。
いや、話せなかった。
でも、それと同じくらい話したいとも思っていて。

だから話しかけようとした。

けれど…志摩は俺の顔を見るといつもとは違うように笑った。
いつもならその綺麗な顔で、笑ってくれるのに。

今日はひきつっていたように見えた。


「ちょっといい?」

俺がそう言うと、志摩は一瞬驚いた顔をしたけど、俺が言いたいことをなんとなくわかってくれたのか、俺の頭をポンポンッとたたいて俺を引っ張って行った。


「え?志摩…?」

「ついて来て?俺の穴場教えてやる♪」


そう言って笑った。


あ~いつもの志摩かも。
ちょっと安心した。



なんて思ったのもつかの間………


「………穴場って、トイレかよ」

「誰も来ないよ?」

「そういう問題じゃないだろ!」

「あっはは(笑)嘘だよ~!だから怒るなって♪本当の穴場はこのトイレの隣の部屋!」


「え?でも確かその教室って開かずの間だったよな?いつも鍵かかってるし、誰も入ってくとこ見たことないし………」

すると、彼はポケットから鍵を出して、ニッと歯を見せて笑う。

「入ろ?」

「あっはい…」


本当、志摩ってわけわかんねぇー………ってかこいつ、意外とちゃっかりしてるとこあるんだよな。



「よし。カギ開けたからどうぞどうぞ。」

「は~い」

一歩入ってみると、一見何のへんてつもないただの物置。
けれど窓際の一番端っこのほうに少しだけきれいな空間があった。




「実は昔はさ、結構荒れてたんだ」



「えっ?」

カギを閉めながら彼がボソッと呟くように言う。

「でも今はマシだろ?」

「ん~まぁね…」

志摩って昔荒れてたのか…でもなんで今になって暴露するんだろう…

「この部屋、最初ほこりがものすごくてさ~ぞうきんがけまでしたんだぞ?俺頑張ったと思わねぇ??」

「あぁ!荒れてたってこの部屋がってことか!」


俺が笑いながらそういうと、志摩は俺よりももっと笑いながら言った。



「俺だって荒れてたよ?まぁ今はむちゃくちゃ優等生だけどな?」



そう言っていきなり俺の方へ体を向けるなり、彼は少し深呼吸をした。
そして、俺に頭を下げてきた。

「えっえぇ?!!」

「ごめんなさい」


そう志摩が謝った瞬間、俺は言葉が出なかった。


「綾……戸田とは、同じN中学だったんだ。そんで…みんなには黙ってたけど、中3の頃、戸田と付き合ってた。俺、初めて告白したんだ。なんか、めっちゃ好きになって、勢いで告ったようなもんだったんだけど、戸田はいいよって言ってくれて、付き合うことになったんだ。」

「……………」

「でも!今はもう付き合ってない。だから、巧也のことは本当に応援してるし、うまくいって欲しいと思ってる。今まで、ごめんな?」


本当にごめんなさい。

そう言って再び俺に頭を下げる志摩。


…じゃあさ。

なんで、病院に2人でいたんだよ。
なんで、あんな、切なそうな顔してたんだよ。
なんで、何とも思っていない相手に対してあんなに怒る必要があるんだよ。

たくさん聞きたいことはあった。

でも、目の前には必死に謝る彼の姿。

聞こうと思えば聞けるけど、でも…


「志摩…顔上げろよ。別に俺に頭なんて下げなくてもいいって。」

でも、志摩は頭を上げようとはしなかった。
仕方なく俺は無理矢理志摩の頭を上げる。

「『付き合ってた』って言ってくれただけで十分だよ」


そう言って俺は志摩の手を引っ張り、部屋から出た。
最初に志摩が俺をこの部屋に連れてきたように。

志摩はまだ言い足りないって感じだったけど…

もう十分だった。

『付き合ってた』なんてこと、ましてや俺に言うなんてのは、ものすごく言いずらかっただろうし。

でも、志摩は言ってくれたから。

だから、もう、十分。


****************





「あぁ~授業さぼっちゃったな?」

「そうだな~」

そんなことを言いながら休み時間を満喫している教室に入る。

「おっサボりくん達。やっと帰って来たな!!」

「ただいま帰りました~!!!」

俺と志摩は岩崎と東野とその他大勢の群れの中へ入って行った。
でも、志摩の視線はあきらかに別の方を向いていて。

やっぱり志摩は…


わかってたよ。
志摩の気持ちなんて。

病院で、あの二人を見るまではわからなかったけれど、今ならわかる。



二人が、どれだけ愛し合っていたか。



どうして別れたかはわからないけどさ。
でも、好き合っていたんだと思う。

じゃないと、あんなに怒ったりしないって。

今だってさ、そんな心配そうな表情して。
そんな表情、俺、いままでに見たことなかった。

「そういや姫と志摩どこ行ってたん?」

「ん~別に?お手洗い行ってただけ!」

「何してんねん!!!」

「あっははははは!!!!」


俺、決めたよ。

もう、やめたから。


「志摩?」

「え?」

だってさ、勝てないでしょ?

「俺、やめるわ!」

綾ちゃんはきっとまだ志摩のことが好きだと思うから。

「何をやめるの?」

志摩だって、きっと…

だから俺、


「戸田さんのこと。好きになんの、やめるわ!」




to be contuned…


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あれから約1ヶ月が過ぎていた。

"あれから"というのはもちろん、岩崎と東野が(勝手に)俺が綾ちゃんに告白をする日を11月20日と決めた日。

…………でも、告白は、出来なかった。

だって綾ちゃんが…あの日以来、


学校を休んでいるから…


だから告白しようにも、出来なかったんだ。


君しかいない

five


「姫、お前あからさまに死にすぎやで」

「……『あからさまに死にすぎやで』って…」

「まぁプリンセス of 欠点の気持ちもわかるけどさ。綾ちゃんだけならまだしも、志摩も休みだもんな?」

「はぁ~志摩何やってんやろなー?1ヶ月も休むなんてやらへんかったのに。しかも何回電話鳴らしても出ぇへんし」

「…………」


そうなんだよ。

綾ちゃんだけならまだしも、志摩も休み。
俺も何回か連絡はしてみているけど、電源が切れたままなのかつながらない。

…………と、いうことで。俺は精神的にも結構辛いわけでありまして。
まぁ岩崎も東野もいるし。
ダチはいっぱいいるからな。
大丈夫っちゃー大丈夫なんだけど………

「あ~あ~もうすぐクリスマスやんかぁ…前会った女の子は結局姫目当てで俺にはかまってくれへんかったし」

いやいや、俺目当てじゃなかったよ。思いっきり志摩目当てだったじゃん。
………まぁ志摩の妹が印象強すぎて他の女の子のことはあんまり覚えてないけど(笑)

「俺も…もー欠点のくせに!!!なんでコイツばっか女持っていくんだよ!!!」


そう言って俺が朝早く起きて頑張ってセットした髪をぐしゃぐしゃにする東野。


「あーもう!やめろ!つーか俺モテてねぇから!お前らのほうがかなりイケメンじゃん!」



そう言うと、東野は俺の髪から手を離し、キョトンとした目で岩崎と共に俺を見た。

なっなんだよ………二人して……俺変なこと言ったか………?

そう思っていると岩崎が笑いまじりに言った。


「お前っ………マジで言っちゃってんの?」

「へ?」

マジって……?


「そりゃ~ね。俺らはぶっちゃけ言うたらイケメンという名の分類に入るんやろうけどな。何回かモデルにスカウトされたこともあったし?でもお前のほうがイケメンやろ~!クラスの女子に聞いてみぃや?」

んなバカな。

俺がイケメン?



………ありえねぇー(笑)


「あっははは!何言ってんの!マジうけるんだけど!」

「お前どこまで天然なんだよ…」

「まぁ東野ぉ~そう言うてもしゃーない♪ほんまのイケメンは自分では気づかへんもんやって!」

「ぶーーーーーーー!!!!」

「はっはっは!!!」

「ん~……岩崎も東野も志摩も、俺からしたらみんなかっこいいと思うんだけどな~」

なんて言うと、2人はニコッと笑って俺にデコピンをした。


「お前かわいすぎ!!」



それからもいろいろからかわれたりもしたけど、すごく楽しかった。


…全ての授業が終わって、俺たち3人以外誰もいない教室。

きっと、志摩もいたらもっと楽しかったのにな。
俺は岩崎と東野が喋っている間に志摩にこそっとメールをしてみた。


本文
--------------

体調大丈夫?
みんな心配してるから、よかったら電話して?





俺は送信ボタンを押すと、静かに携帯を閉め、ポケットに入れた。

今頃、何をしているんだろう?
綾ちゃんのことも心配だけどさ、やっぱ志摩のほうが俺にとっちゃ大事だし。

その時


―――プルルルルップルルルルッ


俺の携帯が鳴った。

「……姫の携帯じゃねぇの?」

「誰からなん~?」

「えっと…」

ディスプレイには電話番号だけが表示されていた。
俺は通話ボタンを押した。


「もしもし…」

『綾乃だけど…わかる?志摩綾乃』

「あぁ!妹さん?」

うわぁ~苦手なんだよ志摩の妹。
でもなんか今日は前とは違う感じだな。
電話だからかな……?

『そうそう。あと、旬のことだけど…………これね、旬の携帯からかけてるの。なんか1ヶ月前くらいだったかな?旬の奴、いきなり病院に行って来るって言って、行っちゃったの。携帯まで置きっ放しで………』

「病院…?」

『うん。多分都心の近くの国立病院。ここからじゃ結構遠いけど…』

「……わかった。ありがとう!行ってみるよ」

『えっ?!ちょっ……』



俺は最後まで聞かずに電話を切り、急いで志摩がいる病院に向かった。

岩崎達には急な用事があるからと言った。

別に本当のことを言ってもよかったんだけど、なぜか言わないほうがいいと思った。

………自分でもよくわかんないけど。






********************





バイクで二時間。


綾乃ちゃんから教えてもらった国立病院に着いた。
あたりはすでに暗くなっていて、すごく寒かった。


「………すっすみません!志摩…旬って人…入院していますか?」


けれど、そこに志摩はいなかった。

じゃあなんで志摩は病院に行くって…

そう思っていると、入口から志摩の姿が見えた。

「し…」


声をかけようと思った。

でも、かけられなかった。


「戸田綾さん、面会できますか?」

看護師さんに彼はそう言って、病室に入って行った。

俺はこっそりついて行くと、病室には

――108号室



と書かれていた。







なんで?


戸田綾?

綾ちゃん?


俺の好きな人?


なんで志摩がここに居んの?


次々と浮かんでくる疑問の答えに、考えたくもない答えが出てくる。

気になって少しドアを開けて中を覗いてみると、1つのベットがあった。
そして、その上には


「綾…ちゃん……?」


その横に立っているのはさっき俺が見つけた志摩の姿。

「なんでまた帰ってくるの?!」

ビクッ!

えっ?!!
もしかして俺が覗いてるってバレた?!

「心配だからに決まってんじゃねぇか!」

あっなんだ。
志摩に言ってんのか……って志摩に?!
ってか初めて志摩が怒鳴ってる声聞いたよ…いっつもおだやか~な声で話してんのに…
それに綾ちゃんだって…いつもなら叫んだりしないのに。それに…





初めて、志摩がクラスの女の子としゃべっているところを見た。






「心配って何よ…同情?そんなのいらない………もう帰ってって言ったじゃない。私はあなたに会いたくなんかない。誰のせいでこんなことになってんのかわかってるでしょ?!!!」

「…………わかってるよ。だから来てんじゃねぇか……」

「もうやめて!毎日あんたの顔なんて見たくない!!お願いだから忘れさせてよ………」



志摩が病室から出たのはそれから1時間程たった後。

出て来たら声をかけようと思っていたのに、声なんてかけられなかった。



……………俺は、志摩に出会ってから秘密にしていたことなんてない。
(まぁ女嫌いなことは秘密にしてるけどさ)

でも、今日初めて秘密が出来た。


一つは、志摩に黙ってこの病院まで来たこと。


二つめは


綾ちゃんと志摩が、中学生の頃に付き合っていたことを知ってしまったこと。





to be continued...

「おはよー」

「あっおはよ~」

「…………」

かわいく『おはよう』と笑顔で言う君。

「……で?どこまで進んだ?」

………目の前には人の恋に首をつっこむ男。


君しかいない

four


「お前………なんで知ってんの?」

「見てりゃわかるよ。………綾ちゃんのこと好きなんだろ?昨日さりげなく言ったときはさんっざん話を変えまくってはぐらかされたけどね」

そう言ってにっこりほほ笑む彼。さすが学年トップ。とでもいえるのか?
いや、それとこれとは関係ねぇだろ。………ってかなんかここ最近、志摩のキャラ違うような…

前はもっと俺に優しかったはずなのにな。


はっ!!!もしかしてこれが志摩の正体か?(笑)


……………まっこいつにならいいか…そう思って「そうかもな~」なんて言うと…


「えっ?!姫ちゃん恋してんの?!!相手誰や?!誰なんや?!!」

「は?!岩崎?!!盗み聞きしてんじゃねぇよ!べっ別に恋なんてしてねぇし!」


なんて言いながらも俺の顔は自分で見なくてもわかるくらいに真っ赤で。
だから今更言い訳しても

「お前顔真っ赤になりながらそんなんゆぅても意味ないから!あっははははは!」

岩崎の言うとおりなわけで(泣)

それから俺はさんざん二人にいじられた。
しまいには東野も加わって、最終的には三人に(号泣)
まぁ三人とも悪い奴らじゃないからな。別にばれても噂にならないからいいんだけど。

でも

「お前、早く告ればえぇやんか」

そう、絶対その話が出てくる。

「…………………………………………………………無理

だから嫌なんだよ!

「なんでやねん!絶対いけるって!姫かっこえぇもん♪」

いやいや、『かっこえぇ』のはお前、岩崎でしょ?
女が苦手な俺にそんな要求しないで下さい…

「岩崎、その辺にしとけって。志摩も困ってるじゃん。な?」

あぁ…やっぱり志摩は優しい奴だ…


一生ついて行きます。(この言葉久しぶりに言ったな)


まぁそんなこんなで(?)月日は流れ…(いや、たいして流れてねぇけどな?)


11月19日、月曜日。


「なぁプリンセス of 欠点…そろそろいいんじゃねぇの?」

「東野…お前、久々に喋ったな。会話んときお前ほとんど登場しないもんな。3話目とか、全く出てないしね。」

「うっうるさい!そんなことよりプリンセス of 欠点!席離れちゃったじゃねぇか!」

「……………」

隣の席に座っていた俺の好きな人、綾ちゃんと離れてしまった。
席替えという、悪魔のしわざによって。

あのときほど担任を恨んだことはない。

それとクラスの連中も。さんざん席替えしたい、席替えしたいなんてせかしやがるから…

「あ~あ~いい感じやったのにな。姫たんと綾たん。」

「岩崎。突然会話に入るのはいつものことだからかまわないが、キモいからその呼び方やめてくれないか?」

「だって文化祭、むっちゃいい感じやったやんか!まっ俺らにはものっすごく迷惑だったけど。なぁ?東野?」

「そうそう。つーわけでさ、お前が告んなきゃ俺ら許さないよ?今日はあいにく志摩も休みだしな。誰もお前を助けてくれねぇぞ~?」


笑いながらそういう東野。隣には同じように笑みを浮かべる岩崎。
ほんと、志摩がいてくれたら…

まぁこんなことはさておき。

文化祭では、本当にいい感じだったと思う。(自分で言うのもなんだけど)

実は俺と岩崎、東野、そして志摩を入れて、4人でバンドを組んでいた。

岩崎がボーカル。
志摩がギター。
東野がベース。
そして俺がドラム。

でも、俺は本当は嫌だった。
みんな良い奴で、信頼できるけど、俺は、

綾ちゃんにボーカルをしてほしかったから。

綾ちゃんは俺達が入っている部活(軽音)には入っていなかった。
勉強に集中するためだろうけど。
だからもちろん綾ちゃんの歌声は誰にも聞く事が出来ないんだろうけれど…

俺は聞いたんだよ。

音楽室で、偶然聞いたんだ。

綾ちゃんと仲がいい友達、南香里奈ちゃんがピアノを弾いて、綾ちゃんが歌っているのを。


とても綺麗だった。透き通る様な声をして。


それは入学して間もなくのことだった。
それから俺はずっと綾ちゃんのことを見てきた。

でも、彼女が入ると思って入った軽音には、彼女は入らなかった。

だから余計にやる気がでなかったのかもしれない。

そして、ついにそんな想いが彼らに伝わったのが、文化祭前日のリハーサル。


「功也!!!!お前!やる気あんのか?!ちゃんと真剣にやらな意味ないやろ!!」

めったに怒らない岩崎が俺に怒鳴った。
いつもヘラヘラして、いつもバカやって。そんな岩崎が。


だから、本気で怒っているのがわかった。

それが嫌というほど伝わったので、



俺もちゃんと言った。


彼女の名前はふせたけど(そのときはバレてなかったから)



「その人の後ろでドラムがやりたい」と。






「それが出来たら、これからはちゃんと真剣にやるから」と。


みんな、渋りながらもいいよと言ってくれた。


…まぁ、一応(かなり強引になったけど)成功しました。

彼女は恥ずかしそうに歌ってくれた。





「…お前、聞いてんの?」

「え?」

「…文化祭のこと思い出してんじゃねぇよ。プリンセス of  欠点、顔にもろ出すぎだから」

「あっはは…」

なんでわかっちゃうんだよ君たち…


「つーわけで!決定やで!明日な!」

「え?うん…?」

「『うん』ゆぅたな?!」

「あ?」

「『あ?』じゃない!聞いてたんだろ?俺らの話!」

「えぇ?」

なんの話…


「明日。11月20日、きりえぇ日にちやから告白せぇ☆!!!」



えーーーーーーーーー?!!!




   
to be continued...

「志摩やんかぁ!!」

「お~岩崎じゃん。」

「…………はぁ」


あれからどれくらい歩いたんだろう。

もしこんなところを俺の大好きな綾ちゃんに見られたら…


俺が好きなのは、今隣にいる人じゃないのにな。

何やってんだよ。




俺は。


君しかいない

three


「俺の曲いくでー!!好きやねん、大阪~!!ほんでもってそーんで……」

あいかわらず岩崎は歌いまくっていた。
きっと岩崎が8人いれば最強の関ジャニ∞が出来るんだろうな~なんて思うくらいテンションが高過ぎで、俺も思わずみんなと一緒に笑ってしまった。

まぁこんな奴だけど、顔はいいほうなのもあって女の子たちの視線は岩崎に集中していた。


今日はみんな岩崎狙いってこことで、俺は早く帰れそうだな………やった♪


なんて、思った瞬間


「巧ちゃんも歌ってよぉ~!」

「あたし聞きたい!!!」

「はい…?」


岩崎と東野が連れてきた女の子たちが言った。

「『巧ちゃん』って俺?」

「うん♪」



えーーー?!!!


俺は何も言えずに、ただひたすらドリンクを飲む。(何やってんだよ)
だって初めてそんなこと言われたんだもん。しゃーねぇじゃん?


「……あっまだ自己紹介してなかったっけ?あたしは真奈美(まなみ)♪」

「ウチは安美(あみ)♪」

「っえ?いや…そうじゃなくて……」


なんで俺なんですか?!!
こんなときに一番居て欲しかった俺のスーパーマン的存在の志摩は、お手洗いに行ってしまっていた。
きっと彼なら俺を救ってくれるだろう。
でも今はいない。

どうする?!


「………巧也くん!私、買う物あるからついて来てくれない?」


いきなり一人の女の子が声をあげた。


「へ?えっと………綾乃ちゃん?!!」

彼女は2人の女の子たちのブーイングが飛び交っているのにもかまわずに、俺の手を引っ張り、室内から無理矢理出した。

「ちょっと!」

彼女に声をかけても返事が返ってくることはなかった。
俺は仕方なく引っ張られるがままにカラオケボックスを後にした。




「……………」

「……………」




………こっこの沈黙は何だ?


俺達はしばらく歩いた。
でも静かな雰囲気に慣れていない俺は、必死に話題を考える。
そんな様子に気付いたのか、彼女はいきなり笑い出した。

「あっはっは…そんなに考え込まなくてもいいでしょうに!」

「なっ!いっいいじゃんか!」

「ほんっと、ガキ以下。」

「うるさい!」

「あはは!」


なんか最初とキャラ違う気するけど…(いや、全然違う。)



でも今日は助かった。




まぁよく考えればあのまま歌を歌っていればよかったのかもしれないけど…。


俺はしばらく彼女と話をした。

女は苦手な俺だけれど、でもなぜか『綾乃ちゃん』とは普通に話せた。

この感じ…綾乃ちゃんじゃない、他の誰かと話している自分と似ている気がする。
だから話せるのかな?………誰と似ているのかはわからないけど。


――――プルルルル

突然綾乃ちゃんの携帯が鳴った。

彼女はディスプレイを確認すると、通話ボタンを押した。


「もしもし、旬?」


旬?え?志摩?


「うん。だってあんた居なかったからさ~………うん。じゃーさなえ連れて来てよ。…………んなの適当に誤魔化しゃ~いいでしょうが!早くしなさいよ?………じゃあね!とにかく連れてくんのよ!


…やたら強引に言うなぁ…。


彼女は電話を切ると、はぁ。とため息を吐き出す。
そして思い出したように俺を見た。

「あっごめん。あんた居たことすっかり忘れてたわ」

「(俺は存在感なしですか。)……まぁ…っていうか、旬って…?」

「あぁ、知らないの?私は…」

「綾乃ーーー!」

「あぁ!旬とさなえじゃん!意外に早かったね~」


『私は…』の続きはなんなんだよ!!ってか志摩なぜ突然現われる?!


「『早かったね~』じゃねぇよ。お前が早くしろって言ったんだろ。ったく…大変だったんだからな?東野がさなえちゃんのこと気に入ってたもんだからさ~なぁ?さなえちゃん?」

「大変だったよね(笑)」

「あれ?さなえは旬のこと好きなんじゃなかったの?」

「ちょっちょっと!綾乃!」

「えっそうだったの?」

「旬くんまでそんなこと言わないでよ!」

「え~?でもさ……――――」


……俺を無視(いや、むしろ忘れて)立ち話しをする3人。

そんな続けて話されたら俺のナレーター(?)すら書けねぇじゃんか。

それにしても、3人はそんなにフレンドリーなわけ?
今日会ったばかりなのにさ。

「あっ巧也。ごめん。お前のこと忘れてた。悪いな~助けてやれなくて…」

ようやく気付いたか。
ってかさっきも同じようなこと言われたよな…俺ってそんなに存在感ないのか?
でもやっぱり志摩は優しいな。俺のこと考えてくれてるし。

「いや…別に…ってかお前綾乃ちゃんと知り合い?」

俺が質問をすると、志摩はきょとんとした目で言った。


「知り合いも何も…俺言ってなかったっけ?」


何をだよ。多分言ってないから早く教えて下さい。


「こいつの名前、志摩綾乃。」

……?

「えっ…?」



志摩…綾乃……?



「つまり、俺の妹。双子なんだよ。」

「ええぇぇえぇぇぇ?!!!!」


話によると、さなえちゃんは志摩の妹(綾乃ちゃん)の友達で、よく家に遊びにくるの普段から仲がよかったそうだ。

幸い、岩崎も東野も(俺も含めて)志摩に妹がいるなんて知らないのもあって、協力してもらったらしい。


「ごめんな?騙すようなことしてさ」

「そんなこと謝らなくてもいいって。俺のこと心配してくれてたんじゃん。逆に俺の方こそ気ぃ使わせてごめんな。ありがとう」

「いやいや…まぁでもさ、俺の妹、口はわりぃけど顔はかわいいだろ?」

「…まぁな」

俺がそう言うと、綾乃は満足気な笑みを浮かべ、さなえちゃんと一緒に帰って行った。
「今度はデートしてやるよ」と言いながら。俺は心の中で「死んでもしない」と言っておいた。

それからしばらく経ってからのことだった。

カラオケボックスに戻り、何時間か歌って帰りの電車の中で岩崎と東野が降りた後、志摩がいきなり言ったんだ。


「早くお前の愛しの綾ちゃんとデート出来ればいいな」

なっjdgfwdl・\djf・dkbf;wdフg*dfbhfj?!


今なんと?!!!!???????





   to be continued...

「では!!!皆さんおそろいになったところで!!!行くで☆」

「おー!!!!!!」

「…………」

岩崎の掛声を合図に、貴重な休みを奪われてしまうことになった俺。

「おりょりょ???姫からヤル気が伝わってこぉへんで?」

「…(おりょりょってなんだよ)はーい。がんばりまーす」

「はぁ~~~?ほんまかいな~」

何が『ほんまかいな~』だ!!!
今日は行く気なんてさらっさらなかったってのに!

岩崎の奴…


君しかいない

two


「え~っと!4人おるから、今から2人に分かれて、かわい子ちゃんゲットしてトゥゲザーするってことでいいか!??」

「了解~つーかお前ルー〇柴か?!」

「ちゃうちゃう!」

「おいっそこ否定したら俺、次どうつっこめばいいんだよ!」



………まぁそんなこんなで俺達4人は2人に分かれて別行動することになった。





岩崎―門松

志摩―俺


え~とりあえず、ここらで簡単に4人の紹介をします。(きっとここでしとかないと忘れるからね。)

まず1組目。


岩崎剛(いわさきごう)

こいつは紹介するまでもなく、皆さんわかっている通り、一番うるさい関西人。

でも成績は学年5位をキープ。


門松圭吾(かどまつけいご)

前回にも言った通り、通称、東野。さっき岩崎とじゃれあってた奴。

そして、この遊びを計画した奴………。
ちなみに服のセンスは4人の中で一番いい。まぁたまに変な服来てくるけど(笑)

ちなみにこいつは学年4位。ときどき3位になったり2位になったり…。


そして2組目。

志摩旬(しましゅん)

みんな顔は良いほうでイケメンという分類に入るんだろうけど、俺はこいつがこの4人の中で一番イケメンじゃないかと思う。

それに優しくて、喋りやすくて、頼りになって。おまけに頭もいい。常に学年トップ!

まぁスポーツは置いといて………


っとそんな感じですかね。

………え?俺?何位かって?

はっはっは。

教えるもんかっ!(←下から数えて3番目くらいをキープ…)



「巧也?」

「わっ!?なっ何?」

「お前…ボーッとしすぎ」

志摩が笑いながら俺に言った。

「あっごめんごめん」

「まぁお前嫌そうだったもんな。なんで来たんだよ?別に無理に来なくても、俺がごまかしてやったのに」


志摩…お前は本当に良い奴だな…

一生ついて行きます。

俺は前回に続き再び誓った。


そりゃね、志摩の言うとおりこんなとこにわざわざ行きたくなんかなかったよ。

こんな馬鹿ばっかやってるけど、俺には好きな人いるしな。





で・も・な?




「………実はさ…」



それは今日の朝(午前6:00)のこと。

俺は行かないつもりだったから、昨日は夜遅くまで馬鹿みたいにゲームしていた(wi〇で)

「なのに岩崎が朝の6時ぴったりに俺の携帯に電話かけてきて!もう最悪だったよ…俺の部屋いっぱいにあいつの好きな曲のアンパンマンマーチ(着うた版)が鳴り響いてさ~ってお前聴いてる?!」

志摩は腹をかかえて笑っていた。

「あはははは!!!」

「笑いごとじゃねぇ!!」

まぁそんなこんなで俺は今ここに居る。
どうせ追い返したところで俺が行かないなんて言ったら、それこそ強制連行されそうだし。

そんな愚痴を志摩に言いながら歩いていた。

え?かわい子ちゃん?んなもん知らねぇよ。
つーかあの子以上にかわいい子なんて居るわけないじゃん。

そう思いながらなんとなく志摩に視線を向ける。

………この機会に志摩に言っちゃおうかな~…

「俺好きな人いるの。うふふ~!」なんつって!!!

「なぁ…」

「ん?」

わぁ!びっくりした~…と思いつつも普通に対応する俺☆




「……あの子めっちゃかわいくね?」

「え?志摩って女に興味あんの?意外~」

「…そりゃ、俺も一応男だから。な?」

「その………『な?』って何?」


とてつもなく嫌な予感がする。
いや、俺の予感があたるわけない。志摩はそんな奴じゃ…



「あの子にしようぜ?声かけてきてよ?」




オーマイゴット!!


こいつっ本当に志摩か?!






「なぁんちゃって。」

え?

「んなことお前に頼まねぇから安心しな?」

そう言って気持ち悪いくらい爽やかに笑って、俺から離れていった。

あぁ…そうだよな。志摩が俺に「声かけて来い!!」なぁ~んて、命令みたいなことしねぇもんな。


…どっかの誰かさんじゃあるまいし。(それ絶対俺のことやろ?!)
うん。そうだよ。君のことだ。岩崎くん。

「って!志摩?!」

そうだ!忘れてた!(←最悪)

志摩声かけに行ったんじゃね?

あいつ初めてだよな?(人のこといえないから)

やばいよやばいよ!(何が?)


「巧也~!」
「えぇ???」

彼は笑顔でこちらに手を振っている。

………ん?

志摩、ナンパ成功したのか?

つまりこれは何?俺、行くべき?行くべきなのか?

あっ手招きし始めたよ?なんか俺、そんなことされたら猫みたいじゃんか。
お~手招きが素早く(?)なってきた。

仕方ない。行くか。(さっさと行けよ)

俺は小走りで彼の元へかけよった。





「トゥゲザーしてくれるってよ」



俺の耳元でこそっと言う。

「…お前、そんなキャラだっけ?ってか真面目な顔してそんな言葉おかしいから!」

「まぁまぁ。んじゃ、さなえちゃん。行こっか?」

志摩の後ろにはかわいい女の子二人。

彼はそのうちの一人、『さなえちゃん』の手を握って歩きはじめる。

俺の隣には名前もしらない女の子。
でもなんかどっかで見たことある女の子。
え~もしかしてまさかのもしかして?もしかして?うわぁ、ありきたりな展開になんの?

「私たちも行こっか?」

「え?」

いきなり女の子の手が俺の手と重なった。

えぇぇぇぇぇえええぇぇえぇ?!

俺の好きな綾ちゃんはそんなことしない!(あっ初めて君の名前書いちゃった)

んじゃ~ココらで俺の大好きな綾ちゃんの紹介もしたいとこだけど…

ココに居んのは綾ちゃんじゃなくて、『綾乃ちゃん』だし。
ってことでまた気分がのったら話します♪


「綾乃っていうの。今日はよろしくね?」



「…うん。よろしく!(綾ちゃん!)」

はぁ~~~やっぱり違うのか…やっぱりありきたりにはいかせてくれないのか…



『綾乃』かよ。『綾』じゃねぇのかよ。

俺はそんなことをずっと心ん中で呪文みたいに唱えながら



『綾乃』という女の子と楽しく会話を交わした。





   to be continued...

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HN:
雨音美夜
性別:
女性
自己紹介:
こんにちは。雨音美夜です。
「君しかいない」
は、馬鹿な男、姫野巧也による馬鹿な恋の話です(笑)
おもしろい話に出来るかはまだわかりませんが、気に入っていただけると嬉しいです。
(君しかいないは完結しました。)

更新は基本は週末ですが、結構不定期なので暇つぶしのつもりで気軽に読んでいってくださいね♪



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